第七回 「MIRAGE」
 ディスカバリー
 パソコン(18禁)


ストーリー性がまったく存在しないRPGの傑作といえばウィザードリィです。
感情移入に限界の全くない世界、カセットひとつひとつに神が宿るとまで言われた偶然と奇跡の産物。
それは世界観だけが生み出したものではなく、ゲーム性の素晴らしさが感動を生む大きな要因でした。

パソコンの18禁ソフトというものは、多くの場合はクソゲーです。
買う方も最初からゲーム性に期待などかけずに絵で選んで買うものなので別にかまいません。
そういうものなのですが、3DダンジョンのRPG「MIRAGE」は傑作ウィザードリィを
ほとんど丸ごとコピーするという大技でゲーム性を完全クリアします。
まともなゲームでこんなことをしたら噴飯ものなのですが、そこは18禁ゲームの恐ろしさ。
さんざんやりこんだゲームと全く同じ感覚で新しいゲームができる、
しかも原作(?)ウィザードリィの面白さをほとんど損なわない上質の移植(?)。
借り物の面白さではありますが、十分に楽しむ事ができました。

ウィザードリィと違うところは、主人公にストーリーがあり作品内で自分の意思を持って行動する事です。
つまり、ここで主人公の行動とプレイヤーの感性が大きく離れてしまったら
せっかくの名作の移植(?)もだいなしです。
しかし、新たに構築された世界観もまた移植度に劣らない出来栄えでした。

主人公は12歳の少年。魔法が一般的に広まっている世界で
(攻撃魔法は「ビシ」「バシ」、回復魔法は「ハスル」「ガンバ」など極限まで簡略化。
 オープニングストーリーでいじめっ子たちにやられる場面さえ、いじめの方法は魔物召喚!)
ほとんど唯一魔法を使う事ができないという無力の最下点。
読心術と、それに対する精神障壁を使うのが当たり前の世界で、精神障壁を使えないために
村の外に住まなければならない有様です。
さらに、村の噂で、1週間後に迫った誕生日に死んでしまうという呪いをかけられた事が判明します。
呪いをかけたのは世界の魔法の力の均衡を維持する魔術師マルデューク。
主人公の父が彼に反逆して殺され、見せしめとして生まれたばかりの主人公も呪いをかけられたというのです。
幸いマルデュークが研究のためにこもった洞窟は村のすぐ近く。
村人のほぼ全員が白眼視する中、少年はマルデュークに延命を願うために洞窟に向かいます……。

ここまでひどい状況から始まったRPGは経験がありません。
村人まで非協力的というのはプレイヤーの精神まで苦しめます。
一応武器やアイテムは売ってくれるんですが、店の人も「あまり出歩かないから村の噂は知らないんだよ」
「よく分からないけど、大変ね〜」など、積極的な味方というよりは
事情を知らないからとりあえず中立という感じです。

冒険を進めていくと、父は単なる反逆者ではなく一族に伝わる強力な魔法の力を秘めた天の宝石のひとつ
「紺青の石」を守って戦ったのだと分かります。
その紺青の石は、マルデュークによって木に変えられてしまった母親の魂が守っていました。
父が遺した剣に紺青の石を備えた最強の武器を手に両親の仇に挑む少年。
一度目のプレイでは敵討ちのストーリーに没入しましたが、二回目をプレイしてみるとまた新たな発見がありました。

敵役である魔術師マルデュークは悪人ではなかったのです。
確かに独善的で手段を選ばない人物であり、主人公にとっては許されざる経歴の持ち主ですが
彼の行ってきた一見悪事に思えた事はほとんど何がしかの理由がありました。
失われていく魔法の力を集めるために全国から処女を集めて、生命力を吸収していきます。
それは主人公の持つ紺青の石の代替手段であって、もしもマルデュークが手に入れていれば
そんな事をする必要はなかったのでしょう。
正当な所有者を殺してまで紺青の石を欲し、そうでなければ生贄を要求する実験の内容は
世界の魔法の力の暴走と減退を押さえて、彼の力で無理矢理均衡を保つためです。
とにかく究極の魔力が欲しいとか、世界を支配するとかではなく、世界にとって必要な事だったのです。
村人のほとんどがマルデュークに協力的で、主人公の少年を村八分にしていたのはそのためだったのです。
ですが、もしマルデュークが紺青の石を手にしたとしても結局使いこなす事はできなかったでしょう。
そのために父親は紺青の石を渡す事を拒み、そのためにマルデュークは父親を殺してしまいます。
世界のためには主人公かその父とマルデュークが協力する事だったのでしょうが、
全ての事情は主人公もマルデュークも知らされる事はなく、二人の間に妥協点は存在しません。
この事を知ってからの二度目のプレイは、単純な勧善懲悪に見えていたストーリーの一言一言が
全く別のものに見えてきました。
最終決戦で死んでしまうマルデューク。彼のいなくなった後、世界はだれが守るのでしょう?

他にも、表面的には気付く事のないような様々な謎を余韻として残しながら
ストーリーは続編「MIRAGE2」に続いていきます。
迫害されていた主人公が真実に気付いて親の仇を討つ、という単純なストーリーを
詳細な書きこみと想像を膨らませる明かされない謎の数々が
ウィザードリィのゲーム性を辱めないだけのレベルに押し上げてしまいました。

この作品には語り尽くせないほどの愛着があります。
Gジェネレーションがなければ、MIRAGEの攻略ページや小説を作っていたかもしれないほどです。
同様に私が好きな作品で、軽いノリと笑える展開が素敵な「雷の戦士ライディ」は
半分メーカー公認のHPがあってうらやましいのですが
検索してもMIRAGEを重点的に扱っているところは見つかりません。
どこかに同志はいないものでしょうか……?


オススメ度:☆☆☆
続編期待度:☆☆☆☆☆


後日、MIRAGE2についても掲示板で語る機会がありました。
その時の文章へのリンクです。



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