第八回 「Wizardry外伝 戦闘の監獄」
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ウィザードリィというのはRPGの古典だけあって、シンプルで奥深いシステムと
果てしなくプレイし続けることができるやり込み度の高さが特徴でした。

最初のシナリオ「狂王の試練場」の発売後に、
13レベル以上の強力な冒険者たちを対象にした続編「ダイヤモンドの騎士」が発売されたのですが、
それまでにはウィザードリィを買ったプレイヤーは自分の冒険者たちを1000レベル以上にまで鍛えあげていたため
せっかくの強力なモンスターたちもあっさり蹴散らされる始末。
日本で「ダイヤモンドの騎士」が発売される時には、バランスを再構成したうえでレベル1から挑戦させたり
「狂王の試練場」とセットで発売して、「狂王の試練場」クリア後すぐに「ダイヤモンドの騎士」に挑ませたり
同じ失敗をしないようにしています。

強豪冒険者用のシナリオを作る前からこの状態になってしまうのですから、
このゲームがどれだけプレイヤーを惹き付け、のめり込ませていったかというのは論を待たないところでしょう。

ウィザードリィの完成形はファミコンで成り立ちました。
グラフィックとBGMが大きく強化され、攻略本や小説で提示された世界観は
当時の子供たちに大きな影響を与えたものでした。
「ファミコン版1〜3」と「スーパーファミコン版5」はカリスマ的な魅力を放ち、
今でもウィザードリィを語る上で欠かせない黄金時代となっています。

ファミコンの時期が黄金時代というのは、今は黄金時代が過ぎ去ってしまった後だという意味でもあります。
アメリカで発売されたウィザードリィ6以降の続編は、
ファンタジー世界のはずだったのに宇宙に飛び立ったり
そもそもウィズ自身が参考にされるべき古典のはずだということを忘れて他のゲームのシステムをパクったり
初代にしてすでに完成され切ったシステムや世界観をどんどん変えていき
全くオリジナルの世界だったのにラスボスにドラキュラを出したりして、
わけのわからない状態になってしまいました。

これではいかんと思ったのか、日本では独自に外伝シリーズが出ています。
こちらはゲームボーイから始まり、ウィザードリィに古くから伝わるゲームシステムを踏襲しようとしていたはずが
勝手に本編の過去の話を作って神話レベルの重大人物を登場させたり
勝手に本編の未来の話を作って愛着のある主要都市を壊滅させたり
初代にしてすでに完成され切った魔法体系や種族・職業をどんどん変えていき
全くオリジナルの世界だったのにキリスト教の悪魔や北欧神話の武具を出したりして、
わけのわからない状態になってしまいました。

……つまり、日米で別個に、別々の方向に迷走してしまい、
結果として「黄金時代」が神話のように語り継がれ、また崇められているという状況が生まれたのです。
昨今のレトロゲーム復刻ブームを迎えるより前に、ウィザードリィの全盛期とも言える1〜3、
そして光を失う直前の時期である4〜5はとっくに最新機種にも移植されています。
もはやロクな続編が期待できない以上は、ウィザードリィの神話は途絶えてしまうしかない……
……ならば、あの「ファミコン版1〜3」「スーパーファミコン版5」を踏襲した外伝を作ればいい!

というのが、この外伝「戦闘の監獄」のコンセプトです。
“あの”5種類の種族。どこの馬の骨とも知れんフェアリーとかデビリッシュとかはなし。
“あの”8種類の職業。どこの馬の骨とも知れんアルケミストとか全能者とかはなし。
“あの”気心の知れたモンスターたち。グラフィックもファミコン版の原画を使っています。
BGMは新作とは言えなかなかのものです(誰か「狂王の試練場」BGMパッチ作ってください)。
そして今回の売りは、迷宮内で拾える武具にランダムで付加される魔法効果。
強いものもあれば逆に弱くなってしまうものもあり、矛盾する効果を持った品が生まれたりして
迷宮を彷徨う時間は以前より圧倒的に長く、楽しくなっています。
以前なら、村正・手裏剣・聖なる鎧(ガーブオブロードでも、君主の聖衣でもない!これは「聖なる鎧」だ!)
を手に入れてしまえば一応の区切りはつくのですが、「戦闘の監獄」では半永久的に探索を続けることができます。
迷宮で手に入る、「世界で一つしかない自分だけのアイテム」はまさに奇跡と偶然の産物。
それに自分で名前を付けて愛用しているときの気分は、かつて「支えの盾」を手に入れたとき以上に嬉しいものです。
かつての黄金時代が、さらなる広がりとボリュームを持って目の前に帰ってきてくれたのです。


……ところがこの「戦闘の監獄」、あまり評価は高くありません。

まず私が絶賛しているランダム付加効果が嫌だという人が多く
(追加シナリオ「慈悲の不在」では、このランダム付加効果もなくなり、完全に昔のウィザードリィに戻っています)
発売当初からの致命的バグの続発(現在ではかなり改善されていますが、まだ残ってます)、
さらにシナリオを作ったのが「外伝3」「外伝4」「ディンギル」で不評を買った人物であることが主な原因です。
自分の名前をもじったキャラクターを重要人物として登場させたり、愛着のある街を破壊したり、
あの「ワードナの魔除け」を名前を変えただけで登場させたり(「ワードナの逆襲」でワードナが持っていったはずなのに……)
「外伝4」や「ディンギル」のデータ集を見ているだけで、
なぜ「戦闘の監獄」が、手に取る前から不快感を持たれるのかよく分かります。

しかし、私から見れば「戦闘の監獄」は守るべき一線をぎりぎり守ってくれているような気がします。
ここがよかった……というよりは、ここがこうなっていなかったら見放していたかもしれない、という点をあげてみます。

『NPCとの会話がほとんどないこと』
NPCを出して欲しいという意見もありますが、私にとっては迷宮の中にはモンスターだけの方が暮らしやすいです。
一部にリドルがありましたが、あれがなければもっとよかったですね。

『登場する最強のモンスターとして、アークデビルよりデーモンロードの方を強く設定していること』
シナリオが進むたびにモンスターの強さはエスカレートするものですが、
3で最強のデーモンロードが5で最強のアークデビルより強いのは個人的に嬉しいです。
これは、ドラクエで言えば「歴代最強のボスはゾーマであって欲しい」というような願望ですが
しっかり現実になっていると嬉しいものです。

『ほぼ全ての魔法を登場させていること』
ほとんど同じと言うことで、どちらかしか登場していなかったマリクトとマバリコ、リトカンとカカメンなど
1〜3の魔法が好きな人も、5の魔法が好きな人も両方楽しめるようになっています。
「狂王の試練場に登場した魔法以外禁止」という遊び方でもクリアできるようになっていますし、
不満はディアルとディアルマが別のレベルにあったり、マニフォがないことぐらいです。

『外伝、ディンギル、エンパイアなどの設定を持ち込んでいないこと。
 また「戦闘の監獄」のシナリオが「狂王の試練場」などに影響を与えていないこと』
ディンギルやエンパイアのシナリオが最も嫌われた原因はこれでした。
今回は過去の栄光に泥を塗ることはなく、全く独立した話として楽しめますし、
また過去作を語るときに戦闘の監獄はパラレルワールドとして無視できます。

『ダイヤモンドナイト、ダイヤモンドドレイク、ダイヤモンドソード、ダイヤモンドの籠手、
 魔法の魔除けなどを登場させていないこと』
過去作を辱め、冒涜する存在としか見えないダイヤモンド軍団と魔除けが存在しないのは本当にすっきりします。
他にも、安易な最強ボスや無敵の存在を出していないことも好感が持てます。
ル’ケブレスのAC−20には神を感じるのに、ダイヤモンドドレイクのAC−120には吐き気を感じます。
ベニー松山氏を引っ張り出して、スカルダやガディやジヴラシアの子孫を登場させたり
バンパイアロードの設定を「ファールヴァルトのアドリアン」にしたりしていないのも、ほっとします。

『キリスト教、北欧神話、インド神話などのモンスターを登場させていないこと』
バンパイアロード、フラック、マイルフィック、グレーターデーモン、ミフネ、レイバーロード……
ウィザードリィには固有の素晴らしいモンスターたちがもともと存在します。
グレーターデーモンなど、「強大な悪魔」という一般名詞であるにもかかわらず、
ウィザードリィが占有した固有名詞であるかのようなカリスマ性を持っています。
ところが、「外伝3」や「ディンギル」ではどうでしょう。
これまでカリスマ性を保っていたモンスターたちは一段劣った存在とされ、
その上にいるのはアガレス、バール、アムネス、ベリト、ゴモリ、マルコシアス、ヒムズ(サタン)……
女神転生にでも出てきそうな名前が並んでいます。
まるで他のゲーム、他の神話に、ウィザードリィというひとつの神話が侮辱されているかのような印象を受けたものです。
「外伝2」の六魔王にも、マイルフィックやアークデーモンと並んで、
フライプリミアー(ベルゼバブ)、トライアス(阿修羅)などが登場し、大いに違和感を感じたものです。
この不満点は、戦闘の監獄にはありませんでした。


もしもこうなっていたら嫌だった、こんなことになっているシリーズは嫌いだった……
というものばかりになってしまいましたが、
それでも、この人が作ったシナリオでこうも昔の空気を保っている作品、
嫌なアレンジのおかげでぶち壊しになっていないシナリオは珍しいと思うのです。
(アイテムランダム付加効果でぶち壊しだ、という意見も多いですが。
 そういう人たちにとってはやはり「戦闘の監獄」はウィザードリィとして落第のはずです)

とはいえ、追加シナリオで「ドラゴンの洞窟」が出て
これらの不安が現実になるのでは、という危惧はいまだに持っています。
「戦闘の監獄」の続編は出て欲しいですし、もっと強いモンスターとも出会いたいです。
シリーズ歴代のアイテムがスペシャルアイテムとして登場したら、という期待もあります。
ただ、それが現実に出てきたとき、今の絶妙な大胆さと謙虚さのバランスが取れたものになっているか、
不安でなりません。全く期待できないと言っても嘘ではありません。

こうして不満点を挙げ、それが解消されているシリーズ・シナリオを選んでいけば、やはり答えはひとつしかないのです。
史上最高のウィザードリィは、後にも先にも、「狂王の試練場」しかなかったのだと。


オススメ度:☆☆
続編期待度:☆



上の感想を書いた時点で危惧していた、さらなる追加シナリオは結局出ませんでした。 「慈悲の不在」「五つの試練」と新作が出て、ユーザーがシナリオを作ることができるエディタも配布され 無料で面白い作品を遊ぶことができるようになっています。 ユーザー作品の中にはこれまでのシナリオを上回る出来のものさえあり、 驚くもの、感心するもの、心の底から楽しめるものがいくつもありました。 それらの続編やユーザーシナリオについて書いたテキストです。 書いた時期が違うので、ですます調とである調が混ざっていますが、あらかじめ御了承ください。 「慈悲の不在」最強パーティー構成に関するメモ 「剣王の反旗」感想 「The Last Battle of ニンジャ」感想 「階級別格闘大会」感想 「千里眼」感想 「永遠の守護者」感想 「影武者」感想


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